楠本内科医院(前編)

院長 楠本 拓生先生

循環器科
内科
透析

あらゆるITツールを駆使して利便性にこだわる。根底にある「もっとよくできるはず」の思い

外来患者数/日 平均80~100人

スタッフ数 27名

導入製品

  • 電子カルテ:エムスリーデジカル「エムスリーデジカル」
  • 電子カルテ入力支援:kanata「kanaVo」
  • 訪問診療スケジュール管理:クロスログ「CrossLog」
  • 自動精算機:POSCO(ポスコ)「レセPOS」
  • 後払い決済:エムスリーデジカル「デジスマ診療」
  • PACS:コニカミノルタ「Unitea α」
  • 予約システム:EPARK「EPARK」
  • 着信ポップアップ:シンカ「カイクラ」
  • 電話自動応答:レイヤード「Iver」
  • 注文業務支援:タッグライン「タグサポ」

課題

  • 承継時点では紙カルテだったが電子カルテは不可欠だった
  • 電子カルテに入力する手間を減らして診療の効率を高めたかった
  • 患者さんにとって希望の医療サービスが選べる状況を提供したい

効果

  • ORCAとの連携による作業効率アップを第一に考えて電子カルテや精算機を選定し、安定的な医院経営ができるようになった
  • 音声認識とAIによってカルテへの入力の自動化に成功。診療の質や患者満足度の向上にも貢献
  • クレジットカード支払いや後払い決済にもいち早く対応し、患者さんの多様化するニーズに対して的確に応えている

医師になった時点で承継することは決めていたのでしょうか。

楠本院長:そうですね。はじめからイメージはしていました。大学も開業医の子息が多い環境で、父に頼まれるでもなく自分が後を継ぐ意識はあったと思います。結果的に40歳の節目を迎えた2015年、生まれ育った当地へ戻ってきました。

当時のクリニックの状況はいかがでしたか。

楠本院長:1日の患者数は30名前後で、少しずつ減っている状況だったと父からは聞いています。慢性疾患で薬をもらうためだけに来院している方も多く、このままの経営ではいけないと思ったのはよく覚えています。

何か特別なことをしたわけではありませんが、院内の内装は少しずつ手を加えてリフォームしていきました。古くなった待合室のソファを変えたり、デジタルサイネージやテレビのモニターを入れてみたり。定期的に院内のレイアウトを変更するだけで、患者さんの間で話題になっていたようですね。「通院するのが楽しみになった」などと口コミを投稿してもらったこともあります。

電子カルテはすぐに導入されましたか。

楠本院長:電子カルテを入れたのは医院に戻って1年ほど経過してからです。「私1人で売上や人件費など経営全般を把握できるようになってから」という父との約束があったので、はじめは我慢していたというのが本音です。

ちょうどレセコンをORCAに変えたタイミングだったので、ORCAと連携しやすかったのがエムスリーデジカルでした。単純に電子カルテとしての評価だけでなく、いかに事務作業を軽減できるかというのは大切ですね。

古くから働いている方が反対するケースもあると聞きます。いかがでしたか。

楠本院長:特に反対はなかったです。みなさん、電子カルテを見たこともなかったので、漠然と不安はあったかもしれません。しかし「絶対に作業が楽になる」ということ、基本的に電子カルテは医師が1人で操作するもので、他のスタッフが何か対応する必要はないということも説明したので、スムーズに理解してもらえたと思っています。

サポートの面で困ったことはありませんでしたか。

楠本院長:ベンダーさんの都合で、1~2週間待たされてしまうのはやや不満だったので、途中でやり方を変えました。導入した際には、院内のパソコン1台ずつにソフトウェアをインストールし、初期設定を済ませてもらいますよね。でも、新しいパソコンを購入したり、古い端末を入れ替えたりすると、入れ直してもらう必要が出てきます。ただし「すぐ行けません」と返事が来て、待っている間は完全に時間のロスになってしまうわけです。

そこで楠本院長は自力で対応する道を選びました。

楠本院長:そうですね。「自分でトライしたいから」とやり方を聞いてみたら実はとても簡単だったのです。証明書を発行して、ソフトをダウンロードして、認証化のパスワードを入れるだけで私1人でも十分対応できるレベルでした。「やってみると意外と簡単」ということは、ITに限ったことではありませんが、まずは自分でできないかトライする発想は重要だと感じましたね。

まず「試してみよう」という気持ちが大切ですね。

楠本院長:私にもっとよくしたいという思いが強いのだと思います。「電子カルテへの入力の手間を減らしたい」というのも、以前から感じてきた課題でした。これまでもいろいろ試してきましたが、Webや新聞雑誌などで新しい製品の情報を知ることも多いです。音声認識システム「kanaVo」との出会いもその典型例です。

会話が電子カルテに反映されるシステム、使い勝手はいかがでしょうか。

楠本院長:とてもうまくいっています。診察中の患者さんとの会話は、すべてマイクを通じて録音され、要約文が自動生成されます。あとから電子カルテに転記するだけでよいので、診察中に患者さんのお顔を見る時間と会話量が増えました。これは患者さんにも喜んでいただいている実感があります。

また患者さんの答えをきちんとカルテに残したいときは、意図的に私が答えを繰り返すように心がけています。これも患者さんには「話をきちんと聞いてくれている」と安心してもらえる副次的な効果があるとわかりました。

処方や検査のオーダー以外は手で入力することはなく、録音のおかげで患者さんの話を聞き逃してはならないという変なプレッシャーもなくなりました。できるだけ患者さんに話してもらうようにしていますが、一般的な診察の光景とはかなり異なるでしょうね。結果的には、診療の質という点でも向上していると思います。

自動精算機、デジスマ診療など会計面のツール導入も余念がありません。

楠本院長:患者さんの利便性、スタッフの手間を軽減すると考えれば、導入は不可欠だと思います。精算機のPOSCOも、導入当時にORCAとの連携がよいものという視点で選びました。会計を閉めたあとに端数の金額があわなくてスタッフが残業するような非効率なこともなくなりました。

アプリを診察券代わりに使えて、診療費の後払いができる「デジスマ診療」も患者さんの選択肢を広げたくて導入したものです。

ITに抵抗のある高齢の患者さんも多いのではありませんか。

楠本院長:ITの得意、不得意は人によりますね。80代の方で難なくQRコードを表示してスマホで受付を済まされる方もいらっしゃいます。そういう方はアプリにクレジットカードの登録もできるので、毎回会計を待つことなく帰宅されています。ただ苦手な方に無理強いするつもりはありません。今のデジスマ診療の利用率は約2割ですが、予防接種などで来院した若い方が率先して使ってくれれば、やがてかかりつけ医が必要になる頃、当院を頼ってくれるかもしれないと期待もしています。

最初から全員が使ってくれるなんて思っていないんです。でも、対応してくれた方から便利になれば、少しずつ広がっていくでしょう。今後も、AI技術の進化などで次々と画期的なサービスが生まれるはずなので、常に情報収集とトライを欠かさないようにしたいです。


※後編では楠本院長が承継後にスタートさせた在宅医療の課題と解決するための方策をお聞きします。

クリニック名 楠本内科医院
院長 楠本 拓生先生
所在地 福岡県遠賀郡水巻町吉田東2-11-1
医院紹介 1947年に開業し、現院長が3代目となる地域密着型のクリニックです。医師4名の体制で外来はもちろん、訪問診療やオンライン診療に対応しています。在宅での腹膜透析など専門性の高い医療を地域のために提供し続けています。
作成日 2024年1月