オンライン資格確認~導入時の注意点とは~

1.オンライン資格確認は2023年4月から原則義務化

オンライン資格確認を実施するためには、クリニックや病院、薬局など事業者ごとの準備が必要です。2021年秋より制度がスタートしたものの、厚生労働省の当初の計画より遅れが目立ちます。厚生労働省は今後一気に普及を進めるために、2022年8月の中央社会保険医療協議会(中医協)で「2023年4月以降は原則義務化」することを決定しました。

合わせて、オンライン資格確認を始めるための費用、実施した場合の診療報酬の加点も見直されました。ただし、義務化される4月までに対応が完了しないクリニックの存在が見込まれるため、やむを得ない事情がある場合の経過措置も設定されています。

オンライン資格確認の導入にあたって注意すべき点や導入プロセスについて、詳しくご説明します。

厚生労働省が発表したオンライン資格確認の例外ケース

2023年3月末の時点で、オンライン資格確認の対応が未完了でも「やむを得ない」とされる例外事項があります。

未完了のケースとして最も多く見込まれるのは、2月末までにベンダーとの契約締結が済んでも、システム整備が終了していない事例です。厚生労働省の見込みでは、5万6000施設程度が該当するとみられています。この場合は、遅くても2023年9月末までにシステム整備が完了すれば問題ありません。

ほかにも

などの理由や困難な事情がある場合は、例外が適用されます。

大半のクリニックはベンダーとの早期契約が必要

システム整備が間に合わない多くの施設に経過措置が適用されるとはいっても、原則義務化されることには変わりありません。クリニックには、2023年2月末までにベンダーとの契約を済ませておく最低限の対応が求められます。

顔認証機能付きのカードリーダーは、メーカーの在庫状況によっては到着まで時間のかかるケースがあります。しかし、先にベンダーを選定し契約などの手続きを進められるので、すでに「カードリーダーは申し込んだが、到着を待っている」状況なら、速やかにベンダーと打ち合わせを行うのがよいと言えるでしょう。

対応可能なシステムベンダーの情報は、オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係医療機関等向けポータルサイトに掲載されています。

製品によって異なる導入手続きの対応

製品によって導入手続きのベンダーの対応が異なります。例えば、あるレセコン分離型の電子カルテでは電子カルテベンダーは対応せずレセコンベンダーが対応する、ベンダーが導入準備作業を外部委託する委託会社とやり取りが発生する、などありますので、事前に確認しておくことをお勧めします。

2.オンライン資格確認の導入までの流れ

オンライン資格確認の運用を開始するまでに、クリニックで行う流れは次のとおりです。

  1. 顔認証付きカードリーダー申し込み
  2. ベンダーの選定、発注
  3. 既存システムの改修・動作確認
  4. 運用開始 患者さん向けに周知を開始し、院内での受付時の流れを整理
  5. 補助金の申請

発注を行い、カードリーダーが到着したら、クリニックではポータルサイトでオンライン資格確認の利用申請を行います。

その後、ベンダー等による機器設定や動作テストを経て、クリニックが再びポータルサイトにて運用開始日を入力します。

併せて、患者さん向けに掲示している「個人情報保護の利用目的」の変更や「オンライン資格確認に対応している」ことを示すポスターなども院内で掲示するとよいでしょう。いずれもポータルサイトで内容を確認できます。

最後に、クリニックで「オンライン資格確認等事業完了報告書」に記入して、補助金の申請を完了することが必要です。

3.【2023年1月時点】オンライン資格確認の対応状況

これまで、オンライン資格確認の補助金額や診療報酬の加算など、重要な情報が定期的に更新されてきました。システムの導入状況などとあわせて、最新の情報を解説します。

情報は随時厚生労働省のホームページで確認できますので、あわせて参考にしてください。

オンライン資格確認の導入状況・利用状況

2023年1月15日現在、カードリーダーを申し込み済みの医療機関・薬局は、約23万施設のうち約21万施設に達しており、90%を超えています。ただし準備を完了した施設の割合は50%台、利用開始済みは40%あまりにとどまっています。

クリニックの対応完了の割合

病院・歯科クリニック・薬局を含んだ場合の割合

顔認証付きカードリーダーの申込

90.5%

91.0%

準備完了施設

90.5%

91.0%

運用開始施設

30.0%

41.9%

 

カードリーダーの申し込みを済ませたクリニックの割合は、病院や薬局などと比べてほぼ差がありません。しかし準備完了または運用を開始している割合は、他の施設よりも低く、対応が遅れている傾向にあるとわかります。

オンライン資格確認の診療報酬加算

オンライン資格確認への対応を促進する目的で、2022年10月より診療報酬に加算する点数が見直されました。初診時の取り組みを評価する「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が算定できます。

オンライン資格確認の運用をスタートさせた病院・クリニックでは、マイナンバーカードを利用した患者さんに対して2点、一般の健康保険証を使う場合には4点の加算が可能です。

オンライン資格確認の導入に関する補助金

顔認証付きカードリーダーは、1台がクリニックに対して無償提供されます。
また、

などにかかる費用に対して、2022年6月以降は42.9万円を上限に実費が補助されます。補助額は一時的に引き下げられていましたが、クリニックの自己負担が増えないように配慮され、再び増額されたものです。

ただし補助金を受ける条件は、3月末までに導入準備を完了させ、6月末までに補助金の申請も終わらせなくてはなりません。

4.オンライン資格確認の導入に関する質問・注意点

Q1. 保険証のみの患者さんへの対応方法は?

A1. 現在のところは、今までどおりの受付をすれば問題ありません。ただ従来の保険証よりもマイナ保険証を使う場合に加点点数が少ない、すなわち患者負担も抑えられる仕組みとなっています。マイナ保険証を健康保険証代わりに受診することを国では促しており、「2024年秋には現行の保険証廃止を目指す」としている点は、把握しておく必要があるでしょう。

Q2. オンライン資格確認を導入しないとどうなるでしょう?

A2. 2023年4月1日以降に原則義務化されたあとも、やむを得ない理由があれば経過措置が取られます。しかし、その後は導入しなければ「地方厚生(支)局による懇切丁寧な指導などが行われるが、個別事案ごとに適宜判断」すると、厚生労働省は示しています。現在のところ、罰則などは明記されていません。

Q3. オンライン資格確認の補助金はいつまでが対象ですか?

A3. 補助金を受ける条件は、端末の準備とベンダーの契約などの準備を2023年3月末までに終え、2023年6月末までに補助金の申請まで完了させる必要があります。