デジタル診察券サービス導入のメリットとは?初期費用と集患効果

紙カルテから電子カルテへの移行が進んでいる一方、今なお紙のタイプが多いものが診察券です。

紙の診察券は患者さんの来院と対面での受付が必須ですが、診察券を忘れてきたり、紛失したりする患者さんも多数見られます。クリニックのスタッフには対面での対応が求められるほか、発行・再発行の度に患者さんの氏名書きやネームシールの用意が必要で、多大な手間とコストがかかっています。

その改善のためにリリースされ普及してきているのが、スマホのアプリやブラウザを活用したデジタル型の診察券です。また自動精算機の導入によって、診察券にQRコードが必要なケースも増えてきました。

「集患・増患にもつながる」との期待の声もあるデジタル診察券サービスについて、メリット・デメリットや導入費用、注意点などをまとめて解説します。

1. デジタル診察券サービスとは

「デジタル診察券サービス」とは、スマホなどで診察券を提示できるサービスのことです。窓口でQRコードなどが表示された画面を提示するだけで、来院受付ができます。自動精算機が導入してある医院では、QRコードで会計も済ませられるケースもあります。

従来の紙の診察券に比べると、受付業務がスムーズになる点が大きな特徴です。また会計決済や予約管理などもスマホ1台でできるため、患者さんにもクリニックにも便利なサービスです。

患者さんからもデジタル化を望む声

診察券のデジタル化は、患者さんからも望まれていることだと言えます。

患者さんを対象にした意向調査※では、クリニックへの要望として全体の30%弱がデジタル診察券サービスについて言及していました。「あなたが通いたい・または通っているクリニックに導入してほしい制度はどれですか」という設問では、15.9%の人が「デジタル診察券を導入してほしい」と回答しています。

クリニックに来る患者さんから「診察券を家に忘れた、紛失した」「管理するのが面倒」といった声を聞く機会も多いのではないでしょうか。複数の医療機関の診察券が束になっている家庭も珍しくありません。

中央ビジコム実施(調査期間:2022年11月11日~21日 調査対象:18歳~79歳の男女610名)

2.デジタル診察券の種類とは?

クリニックで使用されるデジタル診察券の種類は、主に以下の3つがあります。

それぞれの特徴を解説します。

アプリ型診察券

患者さんのスマホなどにアプリをインストールしてもらい、デバイス上で予約手続きによりデジタル診察券を発券するタイプです。予約確認・変更などもアプリ上でできるため、患者さんにも便利です。

アプリ内のプッシュ通知機能を使えば、クリニックからのお知らせを配信したり、予約のリマインドをしたりもできます。患者さんの情報が一元管理されるため、医療の質向上も期待できるでしょう。

LINEとの連携

LINEにデジタル診察券サービスを導入するタイプもあります。クリニックのLINE公式アカウントを作成し患者さんに登録してもらうことで、診療予約が可能です。

日常的にLINEを使用している患者さんも多いため、操作に手間取る人は少ないでしょう。クリニックも操作方法の問い合わせなどに手を取られずに済むはずです。またお知らせもLINE内で届くため、抵抗感なく受け取ってもらいやすい傾向にあります。

LINEの公式アカウントを活用しているクリニックの事例は、こちらの記事でご紹介しています。

Webブラウザ

Webサイトで会員登録をしてもらい、マイページにデジタルの診察券を表示させるタイプです。特筆すべきは、クリニック専用アプリやLINEに比べて、クリニック側の準備や運用の負担が少ない点です。患者さんもアプリのインストールの手間はかからず、クリニックのホームページからアクセスするのも容易でしょう。

しかし、毎回ブラウザを開く手間はかかります。また、マイページのURLをブックマークしても、アクセスする度にログインが必要な場合もあります。患者さんへのお知らせを送りにくいのも懸念点です。

3.デジタル診察券サービスでできること 

デジタル診察券サービスには、受付をスムーズにする以外にもさまざまなメリットがあります。ここからは、代表的な機能を紹介します。

デジタル診察券サービスの内容はメーカーによって差があり、これから紹介する機能はすべてのサービスで実装しているわけではありません。しかし医療機関の業務効率アップ、患者さんの満足度増につながる可能性があるため、こうした機能のあるサービスを優先的に検討してはいかがでしょうか。

予約や受付の負担軽減

デジタル診察券サービスには、予約システムと連携し、スマホ上で簡単に来院予約できるサービスがあります。来院時の受付もスマホでQRコードを表示させるだけで可能なため、手続きがスムーズ。患者さんの待ち時間短縮にもつながります。

来院・治療履歴やバイタル情報のデジタル化

患者さん一人ひとりの診察履歴や日々のバイタルの結果もデジタル化し、一元管理できます。内容は医師や看護師をはじめスタッフ間で共有できるほか、デジタル診察券アプリを通じて他の医療機関と共有も可能です。

セキュリティの向上

デジタル診察券サービスには、パスワード認証や暗号化技術を使用しているものもあります。個人情報や医療情報を安全に管理でき、セキュリティ面の心配も少なくて済みます。

またデジタルデータで管理する分、紙の診察券に比べて紛失のリスクも低いでしょう。加えてメーカーによってはバックアップ機能も搭載しており、万が一の場合にもデータの迅速な復旧が可能です。

医療費の支払いやオンライン診療などとの連携

医療費を決済する機能がついているものもあります。診療が終わった後の支払い、次回予約などが帰宅後でもできるため、受付が混み合いません。クリニック側も、窓口での対応の負担が軽減できるでしょう。

なかにはWeb問診やオンライン診療など、他のシステムと連携できるデジタル診察券サービスもあります。ワンストップで診察まで受けられると、スムーズな診療がさらに実現しやすくなるでしょう。

4.デジタル診察券サービスを導入するデメリット

デジタル診察券サービスには便利な機能が多く、導入するメリットは多いものです。しかしデメリットについても慎重に検討しましょう。

紙の診察券とのハイブリッド運用が必要

デジタル診察券サービスへの一本化は、難しい可能性があります。高齢者の患者さんなどで、デジタル化を嫌がる人も一定数いるためです。

便利さを追求するあまり、患者さんの満足度低下や離脱を招いては本末転倒です。デジタル診察券サービスを浸透させつつ、紙の診察券も使える状態にしておくといった対応が必要でしょう。

とはいえ、デジタル診察券サービスの導入を諦める必要はありません。ハイブリッド運用の手間はかかるものの、紙の診察券だけ使うよりは業務削減しやすいためです。

患者さんは多数のアプリを併用・管理する可能性がある

自院以外のクリニックでも、オンライン診察券サービスを導入している可能性を視野に入れましょう。

オンライン診察券サービスは、各社がさまざまなものをリリースしています。そのためA医院はA社のアプリ、B医院はB社のアプリなど、医院によって使っているサービスが異なることも考えられます。他院でもオンライン診察券サービスを使っている患者さんには、複数のアプリの使い分けが負担に感じられるかもしれません。

導入するサービスを選ぶ際は、なるべく利用しているクリニックが多いものや、クリニックも患者さんもスムーズに使える操作性のよさを判断の基準にするのも良いでしょう。

デジタル診察券サービスに関するよくある質問

最後に、デジタル診察券サービスについてよく寄せられる質問に回答します。

Q1.デジタル診察券サービスの導入にかかる費用は?

A1.初期費用、月額はサービス提供会社によってさまざまです。初期費用0円で、月額数千円~数万円程度で導入できるケースもあります。

ただし、費用だけに着目して選ぶことはおすすめしません。安価なものだと、サービスの内容が限られている場合もあるためです。紙の診察券の代替としてではなく、予約管理や来院履歴の記録、決済なども含めた総合的な業務削減を見越し、自院が求めている機能を提供しているツールを探すと良いでしょう。

Q2.デジタル診察券サービスを利用した場合の安全性は?

A2.デジタル診察券はスマホなどのデバイスで管理します。パスワード認証や暗号化技術を使用しているため、患者さんの個人情報や診療情報を安全に管理できるでしょう。

ツールのなかにはバックアップ機能を搭載し、万が一データが破損したときでも早急に復旧できるものもあります。