医療クラークとは?メリットと導入成功のポイントを解説

多忙な医師をサポートする役割として、近年医療クラークのニーズが高まっています。2024年4月から時間外・休日労働への上限規制が決まり、医師の働き方改革は急務です。とはいえ、団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となるいわゆる「2025年問題」も間近に迫り、医療需要は高まる一方。医療クラークを導入して医師の業務負担を減らしたいと考えるものの、「医療クラークにどんな仕事ができて、どうすれば院内の状況を好転させられるのかわからない」と悩みを抱えるクリニックや医師も多いのではないでしょうか。本記事では、医療クラークの仕事内容やメリットと注意点、導入を成功させるポイントまで詳しく解説します。医療クラークの導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。

医療クラークとは?

医療クラークとは、事務的業務を代行し医師をサポートする仕事です。本章では医療クラークの詳細について解説します。

医療事務と医療クラークの違い

医療事務の仕事は大きく3つに分類されます。

「医療事務」と聞くと受付で患者対応をする人物を思い浮かべがちですが、クラーク業務も医療事務の仕事のひとつです。

医療クラークの異なる名称

医療クラークは医療機関によって下記のような異なった名称で呼ばれていますが、基本的に役割は同じです。

医療クラークは医師の事務的業務を代行し、診療を補助する役割。日本語の正式名称は「医師事務作業補助者」です。呼び名は様々ですが、「医師を補助する」という仕事に変わりはありません。

医療クラークの異なる名称

医療クラークができる仕事内容は、大きく3つに分けられます。

カルテや診断書、処方箋は医師が最終的に確認し署名することで、医療クラークが作成可能です。医師の指示のもと、医療クラークが診察予約や検査内容をオーダリングシステムに入力することも認められています。

医療クラークが一部の業務を代行することで、医師は医師にしかできない仕事に集中でき、診療を円滑に進められるのです。

院内に医療クラークがいるメリット

院内に医療クラークがいると3つのメリットがあります。

  1. 医師の業務減少と診療の効率化
  2. 患者さんの満足度アップ
  3. 経営向上が期待される

それぞれ具体例を用いて解説します。

メリット1.医師の業務減少と診療の効率化

医療クラークが医師の業務を代行することで、医師の負担軽減だけでなく診療の効率化が可能です。以下の診察の流れの例とともに考えてみましょう。

ご覧のとおり、例ではカルテへの記載やオーダー入力を5回行っています。しかし、医師にしかできない業務は②患者さんの主訴から病名を推察することのみ。言い換えれば、カルテ記載やオーダー入力など、②以外の業務は医療クラークが代行できるのです。

また、医療クラークが一部業務を代行することで医師は診察に集中でき、医療の質の向上が期待できます。とはいえ、「全ての業務をこなせる医療クラークを見つけて採用する」のはなかなか難しいです。まずはシュライバーを育成して、カルテ記載を任せるだけでも大きな効果が得られるでしょう。

メリット2.患者さんの満足度アップ

医療クラークが医師の業務を代行することで、患者さんの満足度が向上します。

診察中に患者さんから「先生はパソコンばかりを見ていて、こっちを全然見てくれない」と言われた経験はありませんか?

医師はカルテを遅滞なく記載する義務があります。電子カルテの普及が進んだ現代でカルテを記載するには、どうしてもパソコン画面を見なければなりません。しかし、医療クラークが代行すれば医師は患者さんと顔を合わせて診察が可能となり、患者さんに安心感を与えられます。

また、医療クラークは医師と患者さんの橋渡し役です。「気になることがあっても医師には聞きづらい」というのが患者心理というもの。間に事務員である医療クラークが入ることで、解消できます。

診療現場に医師以外の事務員がいることは患者さんにとってもメリットなのです。

メリット3.経営向上が期待される

医療クラークが医師の業務を代行することで、結果的に経営の向上が期待できます。

医師の業務が減少すると、1日あたりに診察可能な患者数が増えます。さらに、患者さんの満足度向上によって患者数が増えることも。インターネットが普及した昨今、患者さんは自分で口コミなどの情報を収集し、医療機関を選ぶ時代です。医療クラーク導入によって患者さんの評価が上がり、新規患者が増えるという良い循環が見込めます。

また、医療クラークを導入すると一定要件のもと「医師事務作業補助体制加算」の算定が可能になります。残念ながら2023年現在、算定できるのは有床診療所のみで、入院設備のないクリニックは算定不可です。しかし医療クラークの有用性が認められ、医師事務作業補助体制加算の点数は近年診療報酬改訂のたびに高くなっています(※)。いつか無床診療所でも認められる日が来るかもしれません。

医療クラークは業務面だけでなく経営面でもよい結果をもたらすでしょう。

※中医協:働き方改革の推進についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863565.pdf

医療クラークを新規導入する注意点

医師の負担軽減には医療クラークが有用で、患者さんや経営面でもメリットがあります。しかし、新規導入には注意点も。ここからは医療クラークを導入するにあたって注意すべきことを解説します。

注意点1.コストがかかる

医療クラークを新規採用するとなると、人件費の増加は避けられません。導入後のメリットと天秤にかけ、納得できる場合はよいでしょう。しかしコストを抑えたい場合は、すでに受付業務などに従事している医療事務員を兼任として育成することで解決できます。

医療事務やスタッフの採用が難しくなっている現代においては、クラーク業務や受付業務などの専業スタッフを設けるよりも、ジョブローテーション等で「特定のスタッフしかできない仕事」をなくすことが大切です。人件費を抑えつつ、スタッフの急な退職や産休等にも柔軟に対応できるので、兼任育成は2つの面で得策といえるでしょう。

注意点2.教育には時間がかかる

医療クラークを一から育成するのは時間がかかります。なぜなら事務員には医学的知識がないからです。カルテ記載やオーダーの代行をするためには、前提として医師の言っていることが理解できなければなりません。医療用語や検査項目等を覚える必要があります。

また、カルテ記載には「SOAP」と呼ばれるルールがあります。毎日カルテを書いている医師にとっては当たり前のことかもしれませんが、医療クラークは慣れるまでSOAPに則って記載をするのは難しいです。

前段で「すでに自院で働いている医療事務員を兼任として育成する方法もある」と述べましたが、育成には時間を要することを承知しておかなければなりません

医療クラークの導入を成功させる3つのポイント

医療クラークの導入を成功させるためには3つのポイントがあります。

  1. すでに働いている医療事務を兼任で育成する
  2. 医師が心構えをしておく
  3. 電子カルテ環境を整備する

せっかく導入するならば、院内の状況を好転させたいものです。順番にポイントを解説していきます。

ポイント1.すでに働いている医療事務を兼任で育成する

医療クラークの育成は、すでに自院で働いている医療事務員にクラーク業務を教えるのが効率的です。理由は、新規採用することで発生する人件費を削減できるからです。加えて、新規採用した人に教えるよりも、すでに勤務している人に教えたほうがコミュニケーション面でハードルが低いでしょう。

また、可能であればレセプトの知識を有する人から育成することをおすすめします。なぜならレセプト点検ができる事務員は基礎的な医療知識があるからです。レセプト点検をするためにはカルテを読み解かなければならず、自院で頻出する薬や検査項目を理解しているという人も少なくありません。医師の言っていることを理解するための土台ができているので、教育がスムーズに進みます。

コスト面でも、教育時間の短縮という点においてもすでに自院で働いている医療事務員にクラーク業務を教えるのは効果的です。

ポイント2.医師が心構えをしておく

医療クラークの導入を成功させるためには医師の心構えも大切です。

どんな仕事でも最初はできなくて当たり前です。「なるべく早く医師の業務を軽減できるようになってほしい」という気持ちはわかりますが、厳しく指導して辞めてしまったら元も子もありません。声を荒げたり、強い言葉を使ったりせず、質問しやすい空気づくりを心がけるとよいでしょう。

また、カルテ記載をクリアしたら次はオーダー入力、というようにステップを踏んで教育をするのも有効です。カルテ記載を任せるだけでも医師の業務は減ります。減点方式で考えるのではなく、できることを増やしていきましょう。

加えて院内マニュアルを整備することで、育成の効率はアップします。口頭では理解しづらいものも、文面になっていると覚えやすいです。辞書的な役割も果たしてくれるので、マニュアルがあれば教育時間の短縮が期待できます。

医療クラークが「働きやすい」と感じる雰囲気をつくることが早期成長の鍵となるでしょう。

ポイント3.電子カルテの環境を整備する

医療クラークの導入成功には、電子カルテの環境整備も欠かせません。なぜなら電子カルテの環境によって、医療クラークが発揮できる実力が異なるからです。

医療クラークは紙カルテの記載代行をできないわけではありません。しかし、電子カルテと比較するとスピード性は雲泥の差です。将来的にオーダー入力や書類作成まで医療クラークに任せたい場合は、電子カルテ導入の検討をおすすめします。

とはいえ、「パソコン操作は得意でないため、なるべく電子カルテ化は避けたい」という医師の方もいるでしょう。しかし、電子カルテの操作の大部分は医療クラークが代行可能です。自分自身で入力をしなくても電子カルテ化は実現できます

また、効率的に診療補助をするためには、医師と医療クラークの双方が同時に操作できる電子カルテが実用的です。すでに電子カルテ化が完了している医療機関でも、自院の環境を見直してみてください。

より良いクリニック経営のために医療クラーク導入の検討を

医師の業務軽減には医療クラークの導入が有用です。負担が減るだけでなく、結果的に経営も向上する可能性があり、その恩恵は計り知れないものがあります。

しかし、それは長い目で育成をする心構えがあってこそ実現が可能なもの。また、医療クラークの能力を最大限発揮させるためには電子カルテ環境を整えることも重要です。

こんなお悩みを抱えているクリニックや医師の方がいましたら、ぜひ目利きの医ノ助へお気軽にご相談ください。目利きの医ノ助はITシステムの導入と運用のプロ集団です。無料オンライン面談でお困りごとをうかがい、より良いクリニックづくりのサポートをいたします。

Web相談のお申し込み