電子処方箋と医療DX推進体制整備加算の関係は?2025年の加算ポイントを解説

政府は2030年の「医療DX令和ビジョン2030」に向けて医療DXを進めており、診療報酬でも評価の対象となっています。2024年に新設され2025年に新たに改定された「医療DX推進体制整備加算」は、システム導入の有無により、クリニック経営にも影響する可能性があります。

この加算の要件には「電子処方箋の発行体制整備」が含まれており、電子カルテ導入を前提とした電子処方箋管理サービスへの登録が必須です。そのため、新規開業や紙カルテを使用しているクリニックでは、システム導入の有無が今後の経営のカギとなります。診療報酬の加算がどんどん改定されているため、点数を算定できるよう、早期の対応が求められているのが現状です。

この記事では、電子処方箋の導入と医療DX推進加算についてくわしく解説していきます。導入するか悩んでいるクリニックはぜひ最後まで読んでみてください。

電子処方箋の必要性とは?

電子処方箋は2023年に始まっており、導入により医療機関と薬局が患者さんの薬剤情報を共有できるものです。これにより、薬剤の重複投与や禁忌薬の服用を防ぎ、患者さんの安全性を確保することができます。

とくに、高齢者や複数の医療機関を受診している患者さんにとって、過去の処方歴を電子的に記録・参照できるため、大きなメリットがあります。従来は、持参したお薬手帳や患者さんの記憶に頼るしかなく、確実に処方歴を確認するのは困難でした。

さらに、電子処方箋は他の医療機関の情報を連携できるため、オンライン診療や在宅医療との相性がいいのもポイントです。電子処方箋により情報を一元管理することで、医療の質や業務効率がアップします。地域包括ケアの整備や医療DXの発展に欠かせないものとなるでしょう。

電子処方箋の基本概要と仕組み

電子処方箋は、医師が作成した処方情報を電子的に登録・管理し、薬局はその情報に基づいて調剤を行うシステムです。

対応している医療機関では、まず患者さんに電子処方箋を利用するか確認します。利用する場合は「電子処方箋管理サービス」を利用して、処方情報を登録します。発行された引換番号を、患者さんが薬局に提示することで、調剤を受けることができるでしょう。
電子処方箋を利用する際はマイナ保険証の提示が基本ですが、従来の保険証や資格確認証でも対応可能です。また、患者さんはマイナポータルから自分の処方情報を確認することもできます。

2025年1月からは、これまで対象外だった院内処方も電子処方箋の利用が可能になり、2025年4月からは紙の処方箋にも引換番号を印字する方式が導入されたことで利便性が高まっています。

現時点では処方箋に3つのパターンがある

医療機関で発行される処方箋は以下の3種類です。

種類

原本

用紙

電子処方箋管理サービ

①電子処方箋

電子データ

処方内容控え

利用できる

②紙処方箋

処方箋

(引換番号あり)

利用できる

③紙処方箋

処方箋

(引換番号なし)

利用できない


電子処方箋に対応しているクリニックの場合、患者さんは電子処方箋か紙の処方箋かを選択できます。電子処方箋を選択した場合は、電子データに処方内容が登録されるため、処方内容控えが渡されます。また、電子処方箋管理サービスを利用できるため、マイナポータルから処方内容の確認が可能です。

電子処方箋の対応クリニックにて、紙の処方箋を選択した場合は、引換番号が記載された紙の処方箋が渡されます。電子処方箋に未対応のクリニックでは、従来通りの引換番号がない処方箋が渡されるでしょう。

このように処方箋には3つの種類があり、クリニックの運用方法や薬局側の対応によって患者さんの利便性が異なります。また、電子処方箋を利用する場合の「処方内容控え」と「紙の処方箋」は別物なので注意が必要です。

電子処方箋導入の3つのデメリット

電子処方箋デメリット
電子処方箋を導入する際の課題は以下の3点です。


まず、システム導入や構築のために、コストがかかります。初期投資だけでなく、システム保守のためのランニングコストが発生します。
電子処方箋管理サービス等関係補助金の申請について|医療機関向け総合ポータルサイト※補助金に関しては、導入時にベンダーへご相談ください。

現時点では、システム導入により補助金の申請もできるため、早めの導入がおすすめです。

また、電子処方箋を導入したとしても近隣の薬局で未導入の場合、患者さんが不便に感じる可能性があります。2025年4月時点の電子処方箋を導入しているのは、クリニックが16.0%、調剤薬局は76.5%です。現時点ではクリニックよりも調剤薬局の方が導入が進んでいるため、患者さんには対応している薬局を利用してもらいましょう。

電子処方箋を導入する場合、スタッフもシステムに慣れる必要があります。とくに、新規で電子カルテを導入すると操作に慣れるまで時間を要するため、十分な練習時間を設けなければいけません。2025年4月から引換番号付き紙処方箋の導入により、電子処方箋の未対応薬局でも、一部対応が可能になります。これにより、電子処方箋導入のハードルも下がると考えられます。

電子処方箋導入の4つのメリット

電子処方箋メリット
電子処方箋の導入によって得られるメリットは、以下の4種類があります。

1つ目のメリットは、処方間違いの防止です。処方内容を電子処方箋管理サービスに登録することで、薬剤の重複投与や相互作用に関する自動チェックができます。

2つ目は、処方情報を確認できることです。電子処方箋管理サービスにより、薬剤情報を簡単に共有できるようになります。これにより、他の医療機関や薬局との情報連携ができるため、業務全体の効率化にもつながるでしょう。また、患者さん自身もマイナポータルで直近の処方情報も確認できるようになります。

3つ目は、紙の処方箋が必要なくなるため処方箋の紛失リスクが減ります。紛失により再来院の必要が減るだけでなく、医師や事務の再発行の手続きなどの負担軽減にもつながります。

4つ目は、オンライン診療や在宅診療との相性がいいことです。電子処方箋の利用により紙の処方箋を郵送する必要がないため、薬剤の郵送サービスのある薬局を利用することで患者さんは自宅にいながら薬剤を受け取ることが可能です。

電子処方箋はクリニックや薬局だけでなく、患者さんにとってもメリットがあります。これにより、クリニックの業務効率を良くするだけでなく、医療の質にも関わってくるでしょう。

電子処方箋と医療DX加算との関係

2023年度から開始された「医療DX推進体制整備加算」は、電子処方箋と電子カルテ導入を評価の対象としています。国は2030年度までにほぼ全医療機関への電子カルテ導入を目標としており、診療報酬において今後の医療DXを進める上で重要なものです。

電子処方箋の利用がなくても加算は算定できますが、電子処方箋の導入により、より高い点数の算定が可能です。
電子処方箋は電子カルテがないクリニックでも、レセコンのみで利用できます。しかし、加算を算定するためには、電子カルテを導入して「電子カルテ情報共有サービス」に登録しなければいけません。

さらに、小児科外来診療料を算定しているクリニックでは、2025年9月30日までの経過措置として、マイナ保険証の利用割合の条件が15%から12%に緩和されており、加算を算定しやすくなっています。
【2025年】医療DX推進体制整備加算とは?電子カルテ導入の必要性と算定要件を解説

電子処方箋に必要なシステムと環境整備

電子処方箋に必要なシステム
電子処方箋を運用するためには、以下のような複数のシステムが必要になります。

※電子処方箋発行システム、電子カルテ情報共有サービスは、電子カルテのオプションのシステムとなります。

電子処方箋の運用は、レセコンを導入して、電子処方箋発行システムとの連携により運用が可能です。しかし、電子カルテを導入して、電子カルテ情報共有サービスと連携しなければ、医療DX推進加算を算定できません。そのため、まだ紙カルテを使用しているクリニックは電子カルテの導入がおすすめです。

また、電子処方箋を利用するために医師や薬剤師はHPKIカードの取得が必要となります。このカードを使用することで、デジタル認証ができるようになり、電子処方箋を作成できます。

これらのシステムをクリニックの運用形態に合わせて構築する必要があります。また、近隣の薬局と連携を進めなければいけません。クリニック内でのシステム管理体制も整えておく必要があります。

とくに新規開業のクリニックでは、開業に合わせてこれらのシステムの導入を検討するのがおすすめです。開業準備中にシステムを導入できるため、十分にスタッフの練習ができるため開業後もスムーズな運用ができるでしょう。


電子処方箋の準備と医療DX推進体制整備加算の経過措置について

医療DX推進体制整備加算では、電子処方箋を導入することで、2025年9月30日まで経過措置による優遇が受けられる場合があります。そのため、電子処方箋を導入する場合は早めの導入がおすすめです。

医療DX推進体制整備加算を算定するには、電子カルテを導入して「電子カルテ情報共有サービス」で取得される診療情報などを活用する体制を整えなければいけません。医療DXの導入によって、スタッフの業務負担軽減や患者さんの利便性向上など、さまざまなメリットが得られます。


まとめ:電子処方箋の活用がおすすめ


電子処方箋は、効率的に診療をおこなうと同時に、医療安全としてのメリットがあります。国は2030年に向けて医療DXを推進しており、2024年からシステムの導入に関して診療報酬で評価しています。

そのため、電子処方箋の活用を考えているクリニックは、同時に電子カルテを導入して、診療報酬の加算を算定できるようにしましょう。また、開業時に電子カルテと電子処方箋を同時導入することで、一から業務フローを構築できるため、スムーズに開業を進められます。

小児科の場合は、2025年9月30日までの経過措置もあるため、加算点数を算定できるうちに早めの導入がおすすめです。

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