
2025.11.25
外来データ提出加算とは?対象・算定要件・様式1と提出方法を解説
外来データ提出加算は、2023年10月に新設された制度で、生活習慣病の外来患者データを継続して提出できる体制を評価する加算です。
要件の整理やデータの集計、入力など、準備に手間がかかるため、導入に踏み切れないクリニックも少なくありません。
しかし、診療報酬改定のたびに外来収益の確保が難しくなる中で、外来データ提出加算は 「初期整備さえできれば毎月安定して算定できる」 加算の一つです。生活習慣病の患者さんが一定数いるクリニックにとっては、導入効果も大きく、経営改善に直結します。
この記事では、外来データ提出加算の仕組みや算定に必要な準備、実務の流れをわかりやすく解説します。
外来データ提出加算を算定したいけど、「何から整えれば良いのか」「本当に自院でも運用できるのか」と迷われているクリニックの方は、ぜひ参考にしてください。
外来データ提出加算とは
外来データ提出加算とは、生活習慣病の患者さんの診療データを、決められた形式のデータを厚生労働省に継続して提出できる体制を評価する仕組みです。提出されたデータは、医療の質の向上や、地域での診療連携に役立てられます。
外来データ提出加算の届出の現状

令和7年度第4回入院・外来医療等の調査・評価分科会(※)によると、外来データ提出加算を届け出ている医療機関は、2025年6月時点で1,522施設で、生活習慣病管理料を届け出ている医療機関のうち3%にとどまります。
また、クリニックで外来データ提出加算を算定していない理由として多いのが、以下の3点です。
- 入力のための人員が確保できない:46.4%
- 算定のための仕組みが複雑で理解が難しい:39.8%
- 加算の点数が作業に必要なコストに見合っていない:34.2%
多くのクリニックでは、入力の手間と複雑な仕組みに課題を感じていることがわかります。
※【参考元】厚生労働省|令和7年度第4回入院・外来医療等の調査・評価分科会
外来データ提出加算の算定と点数
外来データ提出加算は、生活習慣病管理料ⅠまたはⅡを算定している患者さんを対象に、月1回50点を加算できます。算定するためには、決められたデータを継続的に提出することが条件です。生活習慣病管理料の対象患者さんが一定数いれば、クリニックの安定した収益向上にもつながるでしょう。
提出の頻度
| 提出月 | 対象データ | 提出期限(オンライン) |
|---|---|---|
| 令和7年7月 | 令和7年4月、5月分 | 令和7年7月17日 |
| 令和7年10月 | 令和7年6月~9月分 | 令和7年10月16日 |
| 令和8年1月 | 令和7年10月~12月分 | 令和8年1月22日 |
| 令和8年4月 | 令和8年1月~3月分 | 令和8年4月16日 |
データ提出は、1年間に4回原則オンラインで行います。令和7年度の提出月は、7月、10月、1月、4月です。締切は提出月の20日前後と決められているため、提出日や作業スケジュールをカレンダーで管理しておくことが重要です。
対象患者・算定要件・施設基準とは
外来データ提出加算を算定するためには、さまざまな条件があります。それぞれ詳しく解説していきます。
加算対象となる患者
外来データ提出加算の対象は「生活習慣病管理料」を算定する患者さんとなるため、そちらの要件を確認する必要があります。生活習慣病管理料では、主病が「糖尿病・高血圧症・脂質異常症」の外来患者さんが対象となり、総合的に治療管理をしている場合に限ります。
該当患者さんに関して、同意を得て治療計画を策定してから、生活習慣に関する総合的な治療管理を行わなければいけません。生活習慣病管理料の算定有無だけで判断するのではなく、主病名が該当するかどうかがポイントです。
施設基準とは
以下のような体制が整っていれば、施設基準はクリアしやすくなります。
- 診療録やレセコンから、必要な情報を検索・抽出できる
- ICD大分類(*)程度以上の疾病分類がされていること
- 調査に準拠したデータを提出すること
- 診療記録の保管・管理ができていること
算定するためには、診療記録の管理や疾病分類を整えることが必要です。
*ICD大分類:WHO(世界保健機関)が定める統計分類で、疾病や傷害を大まかに分けるための最初の階層のこと
クリニックで算定するメリット
外来データ提出加算はクリニックの負担が大きいですが、以下のように算定するメリットもあります。
- 安定的な収益アップ(50点 × 対象患者 × 毎月)
- 血圧、LDL、診断年月、合併症情報などの整理が進み、診療の質向上に寄与
生活習慣病の管理をしている場合、毎月継続的に通院する患者さんがほとんどです。そのため、生活習慣病管理料を算定できる患者さんが多い場合は、安定的に収益を得られるでしょう。
また、外来のデータ提出を行う医療機関が増えることで、生活習慣病の患者さんのデータが集まるため、より質の高い診療に還元することができます。
提出データの4つのファイルと役割

外来データ提出加算では、次の4種類のファイルを作成・提出します。
| 様式名 | 内容 | 作成単位 | 入力内容 |
|---|---|---|---|
| 外来様式1 | 患者属性や病態等の情報 | 患者別 |
|
| 外来EF統合ファイル | 入院外患者の医科点数表に基づく出来高レセプト情報 | 患者別 |
|
| 外来様式3 | 医療機関情報 | 医療機関単位 |
|
| 外来Kファイル | 一次共通IDに関する情報 | 患者別 |
|
① 外来様式1(FF1)
患者情報・受診日・生活習慣病に関する数値や診断情報などを入力するファイルです。最も手入力の比重が大きいため、作業負担をどう削減するかが実務では重要になります。
外来様式1を作成する際は、以下の方法のいずれかを選択します。
- 外来様式1入力支援ソフト
- ベンダー各社の開発プログラム
ベンダーの開発ソフトの場合は、電子カルテと連動しているため、入力の負担が軽減されるでしょう。
② EF統合ファイル
レセコンから出力する以下の情報をまとめて使用します。EFファイルは出来高の点数情報のことでEファイル(診療情報)、Fファイル(請求情報)を意味し、2つを統合したものが「EF統合ファイル」となります。EファイルとFファイルは、公式ツールで統合し、提出用データとして整えます。
③ Kファイル
共通IDなどの識別情報を含むファイルです。レセコンから取得した「外来Kファイル生成用データファイル」をもとに公式ツール側で生成します。
④ 外来様式3(FF3)
医療機関の届出情報をまとめたファイルのことです。外来データ提出支援ツールを使用して、 調査項目を入力することでファイルが作成されます。
提出データ算定開始までの流れ

外来データ提出加算を算定するまでには、上記のように届出が必要になります。様式7の10の届出後、施行データの作成、提出に問題がなければ、様式7の11を届け出て加算の算定が可能となります。
公式ツールを使用した提出方法
データの提出作業は、厚生労働省が提供している外来データ提出支援ツールを使用します。具体的な手順は以下のとおりです。
- レセコンから E・Fファイル を出力
- 公式ツールで EF統合 を実施
- 公式ツールで Kファイルを生成
- 公式ツールで 外来様式3(FF3)を作成
- 相関チェック(自動チェック)で不備を確認
- 問題がなければオンライン提出
作成したデータは、原則オンラインでの提出が必須です。その際に、インターネットへ接続可能なパソコン1台が必要で、暗号化した通信を使用します。
適切に提出するための入力ソフトの選び方
提出データのうち、外来様式1データを効率よく作成するための入力支援ソフトがいくつかあります。ソフトの導入により、前回入力のコピー、未入力の警告、コード候補の表示などが可能です。これにより、入力の負担を減らせます。
入力ソフトには複数のタイプがあり、クリニックの環境によって向き・不向きがあるため十分な確認が必要です。
どのシステムを使用する場合でも、提出は必ず公式ツールで実施します。自院に合うソフトを判断する際は、既存システムとの相性・患者数・PC環境・コストの4点を比較すると失敗しにくいでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 診療所でも算定できますか?
はい。届け出をして、継続して提出できる体制が整っていれば算定できます。
Q2. 対象患者はどのように判断しますか?
主病が糖尿病・高血圧症・脂質異常症で生活習慣病管理料を算定している外来患者さんが対象です。
Q3. 提出時期はいつですか?
3か月ごと(四半期ごと)です。締切厳守のため、余裕を持ったスケジュールを立てるとスムーズです。締切前は、レセプトの期間もあるので、計画的に進めましょう。
Q4. 様式1(FF1)はどのように作成しますか?
入力支援ソフトやCSV形式で作成し、最終的に公式ツールでチェック後に提出します。
Q5. 厚生労働省のどの資料を見ればよいですか?
その年度の「実施要領」「Q&A」「操作マニュアル」が基本資料です。常に最新の情報を確認するようにしましょう。
まとめ
外来データ提出加算は、2023年10月に新設された加算です。糖尿病・高血圧症・脂質異常症などの生活習慣病管理料を算定する外来患者さんの診療データを、継続的に厚生労働省へ提出する体制を評価する仕組みです。
算定できるのは月1回50点で、対象患者さんが多いクリニックにとっては安定した収益確保に繋がりますが、現状、データの入力・集計の煩雑さから導入施設は伸び悩んでいます。
データ提出は1年間に4回オンラインで行い、「外来様式1」を含む4種類のファイルを作成・提出する必要があります。
特に手入力の負担が大きい「外来様式1」については、入力支援ソフトを活用し、公式ツールを通じてデータを統合・チェックし、期限内に提出することがスムーズな運用と算定継続の鍵となります。
外来データ提出加算を算定したいけど、入力支援ソフトの選定に困っているクリニックは、ぜひ目利き医ノ助にご相談ください。クリニックの運営状況から、最適なソフトのご紹介が可能です。
