なぜ?電子カルテの価格差の理由
~差が出やすいポイントを解説~

クリニックから電子カルテの導入相談をいただいた際、多くのドクターが「オンプレミス型」がいい、「クラウド型」がいい、とはじめから絞っておられます。理由をうかがうと、最終的には「価格が安い」ということに行き着くように思えます。

確かに、オンプレミス型とクラウド型のイニシャルコストの差は、およそ2~5倍程度の開きが出ることもあります。また、オンプレミス型は5年後のリプレイス(買替え)時に、購入時と同等の費用がかかるのでは、といったイメージを持たれているようです。

電子カルテは近年、多様な製品が発売されていますが、各製品の価格に大きな幅があることに驚かれるかもしれません。しかし、その価格は単に、クラウド型/オンプレミス型の違いによるものだけではなく、各製品の機能、端末代の有無、一緒に契約するサービスオプションの有無、その他の導入条件が反映されています。導入するクリニックとしては、もちろん導入費用を抑えたいところですが、価格だけにとらわれ、直ちに「クラウド型」がいい、と決めてしまうのは、長年クリニックの電子カルテ導入をお手伝いしてきた経験から、非常にリスクが大きいでしょう。

電子カルテの価格差はどこから生じるのか、電子カルテの選定と導入プロセスから順に、詳しくご説明します。

|01 電子カルテ導入にかかるコスト

まずは、実際に電子カルテを導入、運用する際にどのようなコストが発生するのか、具体的に見ていきましょう。

イニシャルコスト

  • ハードウェア:パソコン、ディスプレイ、プリンタ、ルーター、無停電電源装置
  • ソフトウェア:基本ソフト、チェックソフト、予約機能、統計機能etc
  • 導入費用:稼働前の納品作業、クリニック毎のシステム変更、操作説明、シミュレーション
  • 連携費用:院内機器(PACS、予約システム、検査機器etc)との連携に必要なソフトウェア代、作業費用
  • データ移行費用:旧システムからデータ移行を行う際のソフトウェア代、作業費用

ランニングコスト(月額)

  • サービス利用料:クラウドサービスの基本となる料金
  • ソフト保守料:稼働後の問い合わせ対応、法改正対応
  • ハードウェア保守料※2:故障時の交換、修理対応、代替機の手配、設置。

スポット料金

  • 故障時の交換、修理対応、代替機の手配、設置作業、操作説明、稼働立会

以上のような費用が必要となってきます。

ただ、これらの項目が提示された見積に含まれているかどうか。含まれているとすれば、どの項目に含まれているのか。を把握することは、導入する側にある程度知識と比較する基準がないと難しいのが現状だと言えます。

|02 どこで価格差が生じているのか?

それでは費用に係る項目を元にメーカーにより差が出やすいポイントを導入の流れに沿って見ていきましょう。

1.事前打合せ

施工段階での設置場所やネットワーク接続方法、電源個数、容量の確認を行うことで設置トラブルを防ぐ。

※特にインターネットと、電子カルテ等システム用のネットワークを誰が管理するのかはトラブルになりやすい

2.納品作業

PCのOSセットアップ、設置作業、動作確認作業。

医療機関で購入したPCのセットアップは誰が行うのか?

3.導入時作業

セット項目や文書フォーマットの作成などの作り込み作業。

4.操作説明

3の作り込みと平行して、Dr、看護師、事務員の操作説明、全体の運用フローの構築は誰が行うのか?

※運用フローの周知ができていないとミスが多くなり、患者、スタッフともにストレスになりやすい

5.連携作業

各社との連携内容の打合せとソフトウェア、ネットワークの設定作業。

※各システム間でどのようなデータをやり取りするか?必要なネットワーク設定は?

6.稼働立会い

診療初日にメーカー担当者の立会があるかどうか。

7.問合せ対応

操作や算定に関する質問への対応方法は、電話、メール、チャット?

※緊急時にすぐに対応できる体制かどうか

8.ハードウェアの故障対応

ハードウェア故障の対応は、メールが動いてくれるか。クリニック側で修理手配が必要か。

※診療中に代替機への差し替えなどの対応ができるかどうか

9.数年後の更新費用

数年前まではオンプレミス型=更新に購入時と同等の費用がかかることが多かったが、現在はオンプレミス型でもクラウド型同様にハードウェアのみの入替えに対応しているメーカーも多くなった。

|03 電子カルテのさまざまな導入作業が価格に反映されている

ここまで、導入時の流れから電子カルテの価格差が生じやすい導入条件をご紹介しました。このように電子カルテの導入には様々な作業が発生します。

各項目を見ると、ほとんど人件費に係わる費用になっていることがわかりますが、これらが価格に影響しているとお考えください。

一概に『オンプレミス型=高い』『クラウド型=安い』ではなく、各メーカーがどこまで何をしてくれるのか、クリニックにとって必要な作業は何か、を選定時によく確認する必要があるといえます。

『目利き医ノ助』はトータルのコスト検討を踏まえてシステム選定をお手伝い

クリニックを経営する上で一番コストがかかる部分は、やはり人件費であることは言うまでもありません。

電子カルテを始めシステムの導入にかかるコスト=購入費用とだけ考えるのではなく、システムの運用にあたり、ドクターを含めクリニックの全スタッフの手間がどのくらいかかるのかを調べ、そしてシステムと人をどのようにコントロールするかがクリニック運営のキモだと言えるでしょう。

IT化が遅れているといわれた医療機関ですが、近年導入に積極的なクリニックが増えています。システムにできることはシステムに任せ、院内スタッフの業務負担軽減効率化を行うことが安定したクリニック運営にも欠かせなくなってきたことが理解されつつあります。

開業準備から運用後まで、どのような作業が発生するかを把握し、「お金をかける部分」と「手間をかける部分」をしっかり見極めてシステム選定を行うことが一番のコスト削減と言えるのかもしれません。

目利き医ノ助では、診療科目や開業スタイルに合わせた比較提案を無料で行っております。システム選定にお困りのクリニック、医師の皆様はお気軽にご相談ください。