Web予約システムと電子カルテを連携すると何が良いの?連携パターン徹底解説

人員不足や労働時間削減が叫ばれる現代において、医療においてもITシステムの活用は不可欠です。新型コロナウイルスの流行も相まって、昨今では「Web予約できるかどうか」が患者のクリニック選定における大きな要素となり、その需要は無視できないものになりました。また、Web予約システムと電子カルテを連携するとクリニックの業務効率向上も期待できます。

とはいえ「Web予約システムと電子カルテを連携すると便利」と聞くものの「電子カルテと連携することで実際にどんなメリットがあるの?」と悩まれているクリニックや医師も多いのではないのでしょうか。本記事では、Web予約システムと電子カルテの連携効果や連携パターンについて解説します。Web予約システムと電子カルテの連携を検討している方はぜひ最後までご覧ください。

Web予約システムとは?

Web予約システムとは、パソコンやスマートフォンを用いて患者自身がインターネット上で予約を取得できるシステムです。本章では、以下の3項目について解説します。

 

Web予約システム導入のメリット

Web予約システムを医療機関が導入すると以下のようなメリットがあります。

医療機関の診療時間は患者さんの仕事や学校の時間と重なっていることが多く、電話をかけるのが難しい場合があります。しかし、Web予約システムを利用すれば患者は24時間いつでも予約が可能です。それだけでなく、クリニック側も電話対応の手間が減り、スタッフの負担が軽減されるので両者にメリットがあるといえるでしょう。

Web予約システムの種類や注目の機能など、下記記事にて解説しています。Web予約システムの詳細を知りたい方はこちらもぜひご覧ください。

クリニック向けWeb予約システム~おすすめ機能と選び方を解説~:https://www.mekiki-inosuke.com/topics/article/20220323/

Web予約システムの導入状況

矢野経済研究所が2019年に実施した調査(※)では、新規開業クリニック99件のうち62%がWeb予約システムを導入したという結果でした。

Web予約システムは前段で紹介したメリットがあるだけでなく、他院との差別化や人員不足解消の策としても有効です。また、新型コロナウイルスの流行により「クリニックでも予約をして行くもの」と患者意識も変化しました。

近年はWeb予約システムの有用性が高まったことから、新規開業のクリニックでは導入率が高いことがうかがえます。

※1 矢野研究所|新規開業クリニックにおける医療機器・サービス利用状況に関する法人アンケート調査(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2328

Web予約システムと電子カルテを連携する利点

Web予約システムと電子カルテを連携するメリットは、予約が入った時点でどんな患者が来院するのか分かる点です。一度でも来院したことのある患者であれば、既往歴や以前処方した薬等を事前に把握できます。

また、Web問診機能も併せて利用すると、初診患者であってもどんな症状で来院するのか事前に知ることが可能です。感染対策や検査の必要有無、大きい病院へ紹介する可能性等を予想し、準備ができます。

Web予約システムと電子カルテを連携することで、スムーズな診療が実現できるのです。

Web予約システムと電子カルテの連携パターン

Web予約システムと電子カルテの連携には3つのパターンがあります。

①属性(頭書)情報連携
②属性(頭書)+受付情報連携
③連携しない

それぞれメリット・デメリットとともに解説していきます。

①属性(頭書)情報連携

一つ目の連携パターンは「属性(頭書)情報連携」です。予約管理は予約システム側で行い、下図のような流れで受付を行います。

属性(頭書)情報連携のメリット・デメリットはこちらです。

メリット

デメリット

・電子カルテに登録した患者情報を予約システムと共有できる

・患者情報を予約システムに入力する必要がない⇒業務効率化

・連携費用がかかる

・新規患者・既存患者で手順が異なるため、ルールが煩雑になる可能性がある

属性(頭書)情報連携は、電子カルテに登録されている氏名・住所・生年月日などの患者情報を連携できるため、予約システム上に患者情報を入力する必要がありません。業務上の手間が減るので、効率化が実現できます。

一方でWeb予約システムと電子カルテを連携させると、システム導入費や月額利用料とは別に連携費用がかかるため、コスト面では負担が生じることに。

また、既存患者の場合は単純にWeb上で予約を取得し来院するだけです。しかし、新規患者の場合はWeb予約時に仮IDを発行して予約取得したり、電話予約のみでWeb予約システムを利用できなかったりと、既存患者と手順が異なるためルールが煩雑になる可能性は否めません。

②属性(頭書)+受付情報連携

2つ目の連携パターンは「属性(頭書)+受付情報連携」です。前段で紹介した①属性(頭書)情報連携の機能に加えて受付情報を連携できます。②属性(頭書)+受付情報連携の下図の受付は下図のような流れです。

①属性(頭書)情報連携と比較して、②属性(頭書)+受付情報連携の特徴は電子カルテの受付の手間がなくなることです。予約システムの受付を行うと電子カルテも自動的に受付されます。

属性(頭書)+受付情報連携のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

デメリット

・カルテへの受付の手間がなくなる

・電子カルテに登録した患者情報(名前・生年月日・住所など)を予約システムと連携可能

・患者情報を予約システムに入力する必要がない⇒業務効率化

・電子カルテの受付が自動でされるため、来院順と呼出順にズレが生じることがある

連携費用がかかる

新規患者・再診患者で手順が異なるため、ルールが煩雑になる可能性がある



灰色文字は①属性(頭書)情報連携にて既出

属性情報連携よりもさらに手間が軽減される一方で、カルテの受付が自動化されることにより来院順と呼出順にズレが生じる点はデメリットです。

さらに、下記のような状況が考えられる場合、必ずしも「属性(頭書)情報+受付情報連携」が便利とは限りません。

仮に遅刻した患者がいたとしても、電子カルテの受付一覧では予約時間順に表示されてしまいます。呼出順を人手でコントロールする必要があるクリニックは、注意が必要です。

③連携しない

「Web予約システムと電子カルテを連携せず、それぞれ独立して使用する」というのもひとつの方法です。患者来院時は予約システムと電子カルテの受付をそれぞれ手動で行います。

Web予約システムと電子カルテを連携しないパターンは難しいルールがなく、シンプルでわかりやすいのが特徴です。

連携せずにそれぞれを単独使用する場合は、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

デメリット

・来院順と呼出順のズレを気にしなくてよい

・連携費用がかからない。

・電子カルテと予約システムの連携の相性を気にせず選定できる

・予約システム・電子カルテそれぞれに患者情報の登録が必要

・予約システム・電子カルテそれぞれで手動受付が必要

・ヒューマンエラーを起こす可能性がある

Web予約システムと電子カルテの受付をそれぞれで行うため、②属性(頭書)+受付情報連携のデメリットであった「来院順と呼出順のズレ」を気にすることなく、人手でコントロールできます。また、連携時のシステム間の相性を気にする必要もないので、Web予約システムの選択肢が増えるでしょう。

ただし、患者情報を連携していないため予約システムと電子カルテそれぞれに患者登録を行う必要があります。受付の手間も省けないため業務の効率化は難しいです。加えて、受付作業を人手によって行うので、ミスが起こる可能性は否めません。例えば「予約システム上でAさんの来院を確認したのに、電子カルテ上ではBさんの受付をしてしまった」といったヒューマンエラーは注意することでしか防げないでしょう。

予約システムの電子カルテ連携パターン選定のポイント

前章にて3パターンのWeb予約システムと電子カルテ連携方法を紹介しました。ここからは、実際に何を考慮して連携パターンを選択すればよいのか、選定のポイントについて解説します。

ポイント1.クリニックの状況

最適なWeb予約システムと電子カルテの連携パターンはクリニックの状況によって異なります。考慮するべき状況の例は以下のとおりです。

例えば、1日に100人の患者さんが来院するのに対し医療事務が1人しかいなければ、優先すべきは業務軽減と効率化です。一方で、年齢層が高くITシステムへの順応が難しい患者さんが多い場合は、なるべく患者さんの工程が少ないものを選ぶべきでしょう。

また、呼出順を人手でコントロールする必要がある場合、予約システムと電子カルテの連携は不向きな場合もあります。

このように、クリニックの状況によってベストな連携パターンは変化するのです。

ポイント2.費用面

Web予約システムの導入には初期導入費と月額利用料が必要です。加えて電子カルテ連携をする場合は、別途連携費用がかかることもあります。

料金形態は機能やメーカーによって様々です。初期導入費が高額であっても電子カルテ連携費用が含まれているメーカーや、連携費用をオプションとして追加請求するメーカーなど、一概に比較はできませんが、自院に最適な機能と料金のバランスを考えなければなりません。

ポイント3.Web予約システムと電子カルテの相性

Web予約システムと電子カルテの連携には「相性」もあります。すでに導入済の電子カルテと連携させる場合は注意が必要です。

業務効率化を考えてせっかくWeb予約システムと電子カルテを連携しても、相性が悪く不具合が多かったら元も子もありません。

連携後に相性の悪さが発覚しても、電子カルテもWeb予約システムも簡単に入れ替えられるものではないので、事前に相性をよく確認することが重要です。

Web予約システムと電子カルテ連携の今後の展望

Web予約システムと電子カルテの連携は、より便利になる可能性を秘めています。

例えば、現在はWeb予約の際に患者が入力した氏名・住所・生年月日などの予約システム上の情報を電子カルテ側に移行はできませんが、今後期待する機能のひとつです。

予約システム上の情報を電子カルテに移行できれば、新規患者の電子カルテ登録が不要になります。手間だけでなく誤入力の可能性も減少するので、ミスの防止策としても有効です。

医療IT技術は日々進歩しており、今後より便利な機能は増えていくでしょう。人手不足による業務過多解消のためにも、Web予約システムのさらなる発展に期待が高まります。

Web予約システムの導入と電子カルテ連携は専門家に相談を

本記事ではWeb予約システムの電子カルテ連携について、以下の解説をしてきました。

連携パターンについては、それぞれメリット・デメリットがあるので、連携が必ずしも良策とは限りません。また、クリニックの状況によっても異なります。

しかし、Web予約システムを導入することで集患効果があったり、電子カルテと連携することで業務効率化になったりと、クリニックにプラス効果があるのも事実です。

とはいえ、どのWeb予約システムが最適で、電子カルテとの相性が良いのかを見極めるのは難しいでしょう。そんなときは専門家に相談するのもひとつの手段です。

目利き医ノ助はITシステムの導入と運用のプロ集団です。クリニックの理想や課題に応じ、最適なITシステムの選定をお手伝いします。Web予約システムの導入や電子カルテ連携をご検討のクリニックは、ぜひお気軽にご相談ください。

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